- MENU -
POSTED
2026.04.14
DIVISION
TAG
TITLE
【理工学部】\飲み心地は「喉」で変えられる!?/ 喉温度と飲用量から飲み心地を推定し、 温度制御で操作する技術を開発
研究成果のポイント
◇人が饮み物を饮んだときの「喉の温度」と「饮む量」を计测し、人が感じる「のど越し」「おいしさ」「心地よさ」といった「饮み心地」を推定することに成功しました。
◇喉に温度を提示するウェアラブルデバイスを开発し、のど越しなどの饮み心地を変化できることを明らかにしました。
◇冷たい饮み物には冷感を提示するなど、饮料と一致する温度を提示することで、饮用体験が向上することが明らかになりました。
◇ヒューマンコンピュータインタラクション分野のトップ国際会議「CHI 2026」に採択され(採択率:25.3%)、全採択論文のうち上位5%の優秀な研究にのみ授与される「Honorable Mention Award」を受賞しました。
図1.研究概要
上堀まいさん(理工学研究科 理工学専攻 知能情报コース 博士後期課程2年)、伊藤雄一教授(理工学部 情报テクノロジー学科)らのグループは、喉のセンシングと温度提示を通じて、飲み物の「のど越し」「おいしさ」「心地よさ」を推定?変容するウェアラブルデバイスを開発しました。
研究グループは、人が饮料を摂取する际の喉头の皮肤温度と饮用量を计测するシステムを実装し、31名を対象とした実験を行いました。その结果、皮肤温度変化と饮用量から「のど越し」「おいしさ」「心地よさ」といった「饮み心地」をつかさどる主観的な评価を推定し、个人ごとに异なる感覚をモデル化することに成功しました。さらに、この知见をもとに、喉头に対して冷感や温感を提示できるウェアラブルデバイスを开発しました。
このデバイスを用いて20名を対象に行った実験の结果、冷たい饮み物に対して喉に冷感を提示するなど、饮料の温度と一致する温度を喉に提示することで、饮用体験が向上することが分かりました。また、事前に测定した个人の饮用时の喉の温度変化に合わせて温度を调整することで、饮み物の感じ方がどう変わるかには个人差があることも明らかになりました。これにより、喉の感覚を「测る」ことと「変える」ことを组み合わせる手法が、その人にとって最适な食体験を提供する上で非常に有効である可能性が示されました。
本研究成果は、2026年4月13日から開催されるヒューマンコンピュータインタラクション分野のトップ国際会議「ACM CHI2026」にて採択され、全採択論文の上位5%に授与される「Honorable Mention Award」を受賞しました。
図1.研究概要 伊藤雄一教授のコメント
本研究は、喉の温度変化と味覚の新たな関係を情报学的観点から见出し、饮用体験を向上させる新しい方法を提案しています。特に、喉へのわずかな温度変化が「のど越し」や味覚に与える影响に注目し、一人ひとりの感覚に合わせて体験を最适化できることを実証した点が重要です。今后は、痴搁技术などと组み合わせることで多様な食体験を生み出し、食品の开発や健康维持の分野など、さまざまな用途へ展开していきたいと考えています。
研究の背景
私たちが日常的に饮み物を楽しむとき、「のど越し」など身体の内侧で生じる感覚は、味わいや満足感を形作る非常に重要な役割を果たしています。もし、コンピュータを用いてこれらの感覚をセンシングできれば、食体験そのものを再设计し、私たちの食事をより豊かに拡张する新たな技术へと応用することが可能になります。しかしながら、客観的なデータ(温度や摂取量など)から、人が主観的にどう感じているかという内面的な状态を定量的に测る手法は、これまで十分に开発されてきませんでした。
そこで本研究では、この课题を解决するための新しいアプローチとして「喉(喉头)」に着目しました。喉は饮み物が通过する际の感覚を鋭敏に捉える场所です。この喉の変化を客観的に测り、さらに介入する仕组みを作ることができれば、个人の感じ方に合わせたこれまでにない饮用体験のデザインが可能になると考えました。
図2.喉に温度を提示するウェアラブルデバイス 研究の内容
研究グループは、喉(喉头)を対象にのど越しなどの感覚である「饮み心地」を「测る」と「変える」の2つのアプローチを统合した新しい手法を开発しました。本手法は大きく2つの実験を経て検証しました。
まず、31名を対象とした第1の実験では、饮み物を饮んだ际の喉の皮肤温度の変化と、饮んだ量(饮水量)を计测しました。その结果、これらのデータを用いることで、「のど越し」などの主観的な「饮み心地」をコンピュータ上でモデル化(推定)することに成功しました。さらに分析を进めると、同じように饮んでいても、人によって饮み心地の捉え方には违いがあることが明らかになりました。
次に、この计测结果をもとに、喉に対して直接的に温度(冷感や温感)を提示できる専用のウェアラブルデバイスを开発しました(図2)。そして、20名を対象とした第2の実験を実施し、このデバイスを使って喉に温度刺激を与えながら饮み物を饮んでもらい、体験がどう変化するかを検証しました。この実験から、2つの発见がありました。
まず、冷たい饮み物を饮む际には喉も冷やし、温かい饮み物の际には喉も温めるというように、「饮み物の温度」と「喉への温度刺激」を一致させることで、実験参加者全体で饮み心地や美味しさの评価が向上することが分かりました。
一方で、この温度刺激による効果の大きさには、个人差があることも明らかになりました。第1の実験で测定した「饮用中の喉の温度変化」を分析したところ、この个人の特性によって、温度刺激が饮用体験に与える影响度合いが异なることが実証されました。
これらの结果から、まずは「饮み物と喉の温度を一致させる」という全体的な手法を基本としつつ、そこに「个人の感覚モデル」を组み合わせて刺激を微调整することで、一人ひとりに合わせた理想的な饮用体験を作り出せる可能性が示されました。
図2.喉に温度を提示するウェアラブルデバイス 研究成果が社会に与える影响
(研究成果の意义)
本研究の成果によって、个人の感覚の特徴や特定の饮料に合わせて喉への温度提示を调整することで、ユーザの饮用体験を个人に最适化して、体験全体を向上させることが可能となります。これにより、饮料そのものの成分を変えることなく「のど越し」や「おいしさ」を高める新たなアプローチをもたらし、これまでにない食体験のデザインにつながることが期待されます。
今后は、视覚情报や仮想现実(痴搁)技术などと动的に组み合わせることで、実际に饮んでいるものとは异なる感覚をリアルに再现できる、新しい食体験の创出を目指します。例えば、ノンアルコール饮料を饮む际に喉へ适切な温感を提示することで、ワインやスピリッツなどのお酒特有の热感や深い喉越しを再现し、谁もが安全に楽しめる新しい饮酒体験を提供することも视野に入れています。
このような技术は、日常の饮み物の楽しみ方を広げるだけでなく、糖分などを控えた健康饮料での満足感の向上や、高齢者や病気の方の食事支援にも役立つ可能性があります。
特记事项
本研究成果は、2026年4月に開催されるACM CHI2026に採択され、全採択論文の上位5%に授与される「Honorable Mention Award」を受賞しました。
タイトル:“Sensing and Modulating the Feel of a Drink: A Personalized Approach via Laryngeal Thermal Feedback”
著者名:Mai Kamihori, Kouyou Otsu, Yuichi Itoh
顿翱滨:丑迟迟辫蝉://诲辞颈.辞谤驳/10.1145/3772318.3790510
なお、本研究を進めるにあたり、砂原秀樹教授(慶應義塾大学)と池永全志教授(九州工業大学)に有益な助言をいただきました。また本研究の一部は、JSPS 科研費JP22K18424 とJP24KJ1917 の助成、さらに、JST ACT-X,JPMJAX24M3 の支援を受けたものです。

